熱力学など、勉強ログ

主に熱力学。授業内容というよりは勉強の疑問と解決のログを目指します

相転移におけるエンタルピー、エントロピーの変化

相転移における熱力学関数の変化ということで、エンタルピーやエントロピーの変化についてまとめたいと思います

ギブスの自由エネルギーGは全微分の形で
 dG = dH - TdS
すなわち
 \Delta G = \Delta H - T \Delta S
と定義されます

また相転移において \Delta G = 0が成り立ちます

ゆえに T=T_fでは \Delta H_f = T_f\Delta S_f
したがってエントロピーの変化は \Delta S_f = \frac{\Delta H_f}{T_f}

熱力学の問題で考える相転移は、融解や蒸発など等温で起こるものがすぐに思いつきますが、必ずしもすべての相転移が等温で起こるわけではないようです

ギブスの自由エネルギーGのn階微分が不連続となるものをn次の相転移と呼びます

p一定で
 \frac{\partial G}{\partial T} = - S,
 \frac{{\partial}^2 G}{{\partial T}^2} = - C_pですので、
エントロピーが不連続に変化するものは1次の相転移エントロピーが連続でも定圧比熱が不連続に変化するものは2次の相転移ということができます
それぞれの場合の自由エネルギーなどの変化を下図にまとめました

f:id:atomate:20160319224730j:plain
図:相転移におけるギブスエネルギーとその微分の変化

1次、2次いずれにせよ \frac{{\partial}^2 G}{{\partial T}^2} = - C_p < 0で2階微分は負なので、自由エネルギーは上に凸の曲線を描きます

エンタルピー変化を求める(反応熱を求める)

反応熱=エンタルピー変化 \Delta Hです

比熱が与えられたときにエンタルピー変化を求める問題

比熱は大抵の場合、定圧比熱 C_pの形で温度の関数 Tとして与えられるようです

定圧比熱は一定圧力の下で測定した比熱なので、次の式で定義されます

 C_p = \frac{\partial H}{\partial p}

したがってエンタルピー変化 \Delta Hは、積分形で書くことで

 \Delta H = \int C_p dT

で求められることになります

例:温度上昇のみ、相転移しない場合
固体の銀の定圧比熱が298~1235Kにおいて次の式で与えられるとします
 C_p[J\cdot K^{-1}\cdot mol^{-1}] = 21.30 + 8.54 \times 10^{-3}T + 1.51 \times 10^5 T^{-2}
固体の銀1molの温度を298Kから1000Kまで上昇させたときのエンタルピー変化は
 \Delta H = H(1000K)-H(298K) = \int_{298}^{1000} C_p(T) dT
で計算できます
計算結果は 19199\ldots \approx 19.2 [kJ\cdot mol^{-1}]

また、一般的にはある物質のエンタルピーは、標準状態(298Kにおける最も安定な相で純粋な状態にある時)を0とするようですので、
上記の結果から銀1molの1000Kにおけるエンタルピーは19.2kJ/molと求まります

エントロピーは0Kで0ですね



例:温度上昇のみ、相転移する場合~融解熱など~
上記の例では298~1000Kで銀が固相をキープする(銀の融点は961.8℃≒1235K)ために積分が一度で済みましたが
スズSnなどは融点231.9℃で、1000Kまで上昇させようとするものならば固→液の相変態が起こります
相変態によりエンタルピー変化が起こるので、これを既知として
 \Delta H = \int C_{p(solid)} dT + \Delta H_f + \int C_{p(liquid)} dT
という計算が必要になります(式は面倒なので省略)


例:温度一定だが他の物質と反応する場合
炭素Cの燃焼反応 2C + O_2 → 2COの反応熱について考えます
データとしては、各反応物と生成物について、比熱が温度の関数で与えられており、標準状態のエンタルピーがわかっているものとします

  • 標準状態でのエンタルピー変化は下図のようにしてすぐにわかります

f:id:atomate:20160320002737j:plain

  • T ≠ 298Kにおけるエンタルピー変化を求めるには、下図のようにして求めます

f:id:atomate:20160320004141j:plain