相転移におけるエンタルピー、エントロピーの変化
相転移における熱力学関数の変化ということで、エンタルピーやエントロピーの変化についてまとめたいと思います
ギブスの自由エネルギーGは全微分の形で
すなわち
と定義されます
また相転移においてが成り立ちます
ゆえにでは
したがってエントロピーの変化は
熱力学の問題で考える相転移は、融解や蒸発など等温で起こるものがすぐに思いつきますが、必ずしもすべての相転移が等温で起こるわけではないようです
ギブスの自由エネルギーGのn階微分が不連続となるものをn次の相転移と呼びます
p一定で
,
ですので、
エントロピーが不連続に変化するものは1次の相転移、エントロピーが連続でも定圧比熱が不連続に変化するものは2次の相転移ということができます
それぞれの場合の自由エネルギーなどの変化を下図にまとめました
1次、2次いずれにせよで2階微分は負なので、自由エネルギーは上に凸の曲線を描きます
エンタルピー変化を求める(反応熱を求める)
反応熱=エンタルピー変化です
比熱が与えられたときにエンタルピー変化を求める問題
比熱は大抵の場合、定圧比熱の形で温度の関数として与えられるようです
定圧比熱は一定圧力の下で測定した比熱なので、次の式で定義されます
したがってエンタルピー変化は、積分形で書くことで
で求められることになります
例:温度上昇のみ、相転移しない場合
固体の銀の定圧比熱が298~1235Kにおいて次の式で与えられるとします
固体の銀1molの温度を298Kから1000Kまで上昇させたときのエンタルピー変化は
で計算できます
計算結果は
また、一般的にはある物質のエンタルピーは、標準状態(298Kにおける最も安定な相で純粋な状態にある時)を0とするようですので、
上記の結果から銀1molの1000Kにおけるエンタルピーは19.2kJ/molと求まります
※エントロピーは0Kで0ですね
例:温度上昇のみ、相転移する場合~融解熱など~
上記の例では298~1000Kで銀が固相をキープする(銀の融点は961.8℃≒1235K)ために積分が一度で済みましたが
スズSnなどは融点231.9℃で、1000Kまで上昇させようとするものならば固→液の相変態が起こります
相変態によりエンタルピー変化が起こるので、これを既知として
という計算が必要になります(式は面倒なので省略)
例:温度一定だが他の物質と反応する場合
炭素Cの燃焼反応の反応熱について考えます
データとしては、各反応物と生成物について、比熱が温度の関数で与えられており、標準状態のエンタルピーがわかっているものとします
- 標準状態でのエンタルピー変化は下図のようにしてすぐにわかります
- T ≠ 298Kにおけるエンタルピー変化を求めるには、下図のようにして求めます